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『僕は誰よりも君の事を知っている』 『だけど・・・・』 『君は僕の事なんて覚えていないだろう』 僕は君の事を、幼い頃から見てきたんだ。 君は親の顔さえ見た事が無かったよね。 気が付いた時には孤児院にいて、たった一人の妹にしか、心を開けないように見えた。 あの頃の君は、そこの園長先生に我が子のように可愛がられていたよね。 だけど、君は、その園長先生が嫌いだった。 そうではないか、君は、あの頃から、大人の人が嫌いだったのかな? 生まれて、すぐに、親に裏切られた君は、 誰も信用なんて出来なくなってしまっていたのかな? だけど、それは、僕達が望んだ事だったはずなのに・・・・。 しばらくして、妹が何処かの家に引き取られてしまう事が決った時、 君は、生まれて、初めて暴れたんだ。 どうしようもない、現実が降りかかってきた時、 何も出来ない自分が悔しくて、悲しくて、情けなくて、 小さい自分には、守りたいものさえ、守れなくて。 だから君は強くなろうと思ったのかな? そんな君の事を思って園長先生は優しく包もうとしてくれたね。 君が寝る時、いつも、オトギバナシをしてくれたのは園長先生だった。 よく話してくれたのが『100万回生きた猫』の話。 だけど、君は、その話が始まると、いつも、気分が悪くなった。 君は、その時から分かっていたのかな? 後悔しない生き方なんて何処にも無いって事に。 だったら、「100万回も生きなくちゃいけない」と言う事に・・・・。 そんな、愛想の無い君の事を思って、 園長先生は皆と仲良くなれるように、あだ名を付けてくれた。 「波瀬ッチ」 そう、君の名前は波瀬ッチ。 だけど、波瀬ッチは、その、あだ名で呼ばれると、返事をしなかった。 別に、皆と仲良くする事が、嫌だったわけじゃないんだよね? ただ、又、裏切られて一人になる事が怖かったんだよね? 誰かに頼って、自分が知らない間に裏切られ、惨めになる事に怯えていたんだよね? だから、波瀬ッチは・・・・・。 傷つかないように、後悔しないように、進みたいと思ったんだよね? そんな波瀬ッチも、10歳の時にある家に引き取られた。 だけど、波瀬ッチは、高校を卒業すると同時にその家を飛び出した。 波瀬ッチは、妹を探しに出かけたのかな? 子供の頃に叶えられなかった事を、いつまでも忘れられなかったのかな? それとも、今なら出来ると思ったのかな? だけど、その後、波瀬ッチはどうなった? 本当に後悔しない、生き方を選べたのかい? 僕から見たら、波瀬ッチは、さかさまの靴を履いているように見えたよ。 『僕は誰よりも波瀬ッチの事を知っている』 『だけど・・・・』 『波瀬ッチは、僕の事なんて覚えていないだろう』 『エピソード/1』に続く。 |
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