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○●さかさまの靴80s○●

2007/06/20 09:11
ミカタを変えたら、世界はひっくり返る。

それぞれの『思う』を僕達は、どれだけ理解するのだろう?
それぞれの『コトバ』を君達は、どれだけ飲み込むだろう?
偶然に重なった足跡の先に見える、それぞれの『道しるべ』

僕と君の視線から描かれる一つの物語。


  • 『さかさまの靴80s/☆モノローグ☆』



  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 0☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 1☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 2☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 3☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 4☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 5/1☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 5/2☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 5/3☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 6/1☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 6/2☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 6/3☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 7☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 8☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 9☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 10/1☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 10/2☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 11☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 12☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 13☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 14/1☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 14/2☆』


  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 15☆』



  • 『さかさまの靴80s ☆さかさまの靴を履く人々☆』

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    さかさまの靴80s ☆さかさまの靴を履く人々☆

    2007/05/08 09:00
    いつかの自分を忘れてしまうほど働いて、疲れ果て、立ち止まってしまったり、
    果てし無く、長い道を目の当たりにして、
    そこからの、一歩が踏み出せなく、燻ぶり続けたり、
    そんな、弱い人間を探したら、きっと、いくらでも出てくる。

    感性の違いや、価値観の違いが、
    そもそも、誰に植え付けられたのか、分からないモノが多すぎて、
    本当に正しい事が分からなくなり、
    皆がそれぞれの間違いを何度も何度も繰り返し、生きている、
    所詮、僕等の中に特別な奴なんていないのだから、
    だから、きっと、僕等は変わっていくのだろう。

    欲の前では誰もが無防備になり、ただ、ただ、本能のままに走りだしてしまう。

    ふと我に帰りに、周りを見渡すと、そこには、もう誰も居ない。

    可笑しいと思い、足元を見ると、
    まるで綱渡りをする為の、細いロープのような道で、
    何処までも、長く長く伸びている。

    現実が想像を超えないように、自分が走ってきた道を振り返ってみると、
    突然、訪れる・・・・・・・・・・不安と孤独。

    自分の器の大きさに、一人になって、ようやく気づく、
    だけど、その時には、もう一杯一杯で、どんどん、毀れ始めているんだ、
    早く気づけなかった、自分への後悔と無念さが、
    さらに次への一歩を踏み出させなくする。

    悪循環なのは分かっているのに、どうしても踏み出せない一歩、
    そんな時、どうして僕等は手を合わせ拝んでしまうのだろう?

    神様なんて居ない事は知っているハズなのに・・・・。

    誰かが作った、魔法の言葉にすがりたいのかな?
    それとも現実の恐怖に立ち向かう為には、絵空事の世界が必要なのかな?
    いくら考えても出ない答えに僕は・・・・ただ、ただ、やっぱり、拝んでしまう。

    だけど、本当は分ってもいるんだ・・・・・・・・。
    この世界を作ったのは、神様じゃなくて、
    神様を作った奴らが、作ったって世界だって事も・・・・・・・・・・・・・・・・・。

    だから、僕は「神様と言う名の作り物」が大っ嫌いだ。


    『さかさまの靴80s』へ・・・。
  • 『さかさまの靴80s』


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    さかさまの靴80s☆エピソード 15☆

    2007/05/07 12:29
    数ヵ月後・・・・・。

    街に大きな足跡を残していった台風は跡形もなく消え去っていた。
    陸を越え海に帰っていった空の暴れん坊は、何も持ち帰ったのだろう?

    少し、高い所から見える海は穏やかで、
    何事もなかったかのように街は活気で溢れかえっていく。

    青く輝く太平洋。
    僕等が息苦しくなるような海の中には、
    光が届かない、真っ暗な世界があるのかも知れない。
    そんな暗闇の中で光を失った魚は、何を求めて陸を目指したのだろう?

    陸の上で、さかさまの靴を履き続ける人々は、
    初めは、何処に向かって行きたかったのだろう?

    ただ、季節はずれに漁師に釣られ要らないと捨てられたハコハゼは、
    居場所を間違えてしまった悲しい姿で死んでいる様に見えた。

    コレは、あるバーに閉じ込められてしまった。

    波瀬洋平と言う名の男の物語。


    『僕は誰よりも君の事を知っている』

    『だけど』

    『君は僕の事なんか覚えていないだろう。。。』

                                          おしまい。





    『さかさまの靴を履く人々』・・・・。
  • 『さかさまの靴80s/☆さかさまの靴を履く人々☆』
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    さかさまの靴80s☆エピソード 14/2☆

    2007/05/07 08:37
    子供の頃に描いた夢を僕は、どれだけ覚えているのだろう?
    叶えたかった夢の残骸は、誰が受け継いでくれるのだろう?

    僕達は、いつまで・・・・。

    『忘れたフリ』と『見えないフリ』を続けていくのだろう?


    波瀬の前に立っている、ハッピを着たピエロのハピ。
    その姿は・・・・・。
    今は何処にでもいる普通の青年の姿に変わっていた。

    今まで見たこともないような姿になってしまったハピを見た波瀬は、
    大きく口を開けた。

    そして、自分の意思とは関係なく『言葉』飛び出した。

    「クスオ?」

    波瀬の頭の中に在った見えない霧のようなモノが一瞬に晴れていく。
    それは、今まで自分の奥にしまってあった記憶が蘇るような感覚だった。

    波瀬は目玉を左右にキョロキョロ動かして呟いた。

    「あれ・・・・・可笑しいな・・・・可笑しいだろ、これは」

    慌てふためく波瀬の姿を「クスオ」と言う名のハピはニコニコしながら見据え言った。

    「どげんした?」

    すると、波瀬は・・・。

    「いや、そんなハズない・・・・お前・・・誰だよ?」

    と、精一杯、強がって見せた。

    クスオは波瀬から目を逸らす事はなく、
    少し遠い所を見ているような視線で見つめている。
    その瞳は 『それは、波瀬ッチが一番分っとる事やないとね?』 と言いたそうだった。

    激しく動揺している波瀬の体は、地震が起きたような激しさで上下に動き、
    まともに喋る事さえも出来なくなった口から放たれた言葉は、
    水の中でコモってしまうような、そんな音しか出なくなっていた。

    波瀬はその濁った言葉でクスオに聞いた。

    「アレ?・・・クスオ、俺は・・・・何回、生きたんだ?」

    すると、クスオは。。。

    「思い出したね?」

    と言って、ニッコリ微笑んだ。

    波瀬は一度、俯き、もう一度クスオに質問をしようと言葉を投げかけた。

    「お前は全部、知ってたのかよ?」

    が。。

    そこには、クスオと言う名の青年の姿はなく、今まで居たハピの姿があった。

    ハピは、とても気持ち悪い笑顔を見せた後に。

    「当たり前やろ・・・・・・俺は、昔のお前なんやから」

    と、波瀬の質問に答えた。

    しばらく何も喋らないハピは、静かに波瀬に近寄ると・・・・。

    「・・・無い頭で、いろんな事を考えすぎたんやね」

    と言って、静かに波瀬の頭に手を置いた。

    波瀬の頭の中は、もう正常ではなかったのかも知れない。
    それは、死を目前とした人間が見る最後の幻想だったのかも知れない。
    だけど、それが、本当なのかウソなのかは・・・・。
    きっと、自分自身にしか分からないのだと思う。

    波瀬は最後の気持ちの整理をしたいかのように話し出した。

    「・・・・・俺達はどうして、こんなに違うんだろうな?」

    ハピは、そんな波瀬を見て、少し寂しそうに答えた。

    「それは、きっと・・・・・・分かり合う為・・・やないかな」

    そんな答えを聞いた波瀬は、
    すがる様な表情と大きな声でハピに言った。

    「じゃあ、俺達は分かり合えたのかよ?」

    すると、ハピは、右手の親指と中指でパチンと音を鳴らすと、周りを見渡した。
    そこには、波瀬が今まで出会った人々が、波瀬を囲むように並んで立っていた。

    そんな人々を見渡しながらハピは・・・。

    「・・・・・・・・・・どうだか」

    と、答えにもならない言葉を吐いた。

    波瀬の瞳は真っ赤に腫れ上がり、大きく震えていた体は、少し小さくなっていくように見えた。
    そんな状態で波瀬はハピを見ながら聞いた。

    「なんだよ・・・すべては、絵空事なのかよ?俺は自分で雁字搦めになってたのかよ?」

    ハピは、子犬のようにキャンキャン叫ぶような波瀬の姿を見て、
    ケラケラと笑ながら、そこに居る全ての人々に聞こえるくらいの大きな声で叫んだ。

    「そりゃそうやろ、だって、あんたが・・・いや俺達が作った世界やろ、ここは」

    楽しそうに踊り、悲しそうに笑うピエロの姿は、滑稽そのものだった。

    ハピの姿を見ている波瀬の口元は次第に・・・。
    真っ赤に腫れ上がった瞳とは裏腹に微笑んでいるように見えてきた。
    そして、その口から、まるで狂ったような言葉を投げかけた。

    「おかしいよな、だからか、だから、俺は・・・お前の事が大っ嫌いなんだな」

    するとハピは波瀬にだけ聞こえるくらいの小さな声で呟いた。

    「どげんやったね?三回目の景色は?」

    波瀬は自分の周りに薄っすら見える人々を眺めながら、
    笑顔と苦痛の表情が交じり合ったような顔をしながら答えた。

    「・・・・・真っ暗だったよ」

    そんな波瀬を見たハピは、少し愛想笑いをしながら、又、呟いた。

    「そっか・・・・じゃあ、次はどんな景色を見てみようか??」

    波瀬は、何かの光で反射して輝いている鏡を見ながら、
    まるで、海の底から、その光が差す方向に泳いでいくような気持ちになりながら答えた。

    「もう、真っ暗な海の中は嫌だな・・・疲れるだろ・・・所詮は作り物だったとしてもさ」

    初めて、波瀬の本音が聞けたような気分になったハピは、
    波瀬の言葉を聞いたとたん、大きな声でゲラゲラ笑い始めて大きな声で叫んだ。

    「そやね、ひひっひっひひひっひ、でも、アンタは、何度でも、何回でも、色んな事を想像できるんよ」

    そんな、ハピの姿を見た波瀬は、今まで出した事のないくらいの大きな声を出して叫んだ。

    「うるせーよ!!俺は、そんなに適当に思ってたわけじゃねーよ」

    そして、少し寂しそうな顔をした後に。
    まるで、鏡の中の自分にすがるような表情をして

    「・・・なあ?」

    と言葉を投げかけた。

    だが、波瀬の言葉を、もう聞こうとしないハピは狂ったように笑い続けていた。
    そして、ダーツを投げながら、「しょーもない」「つまらーん」と叫んでいた。

    波瀬は、そんなハピを見ながら・・・静かに呟いた。

    「なんで俺は、こんな生き方を選んだんだ・・・悪いのは・・・全部、俺じゃねーかよ」

    そして。。。。。

    自分の事に、まるで興味をなくしてしまったハピを見ながら。

    「なんで、俺は、こんなに笑ってんだ・・・笑いたいわけじゃねーんだろ」

    と、言って俯いた。

    暗闇の中、ハピの笑い声が、バーに響き渡る。

    『ははっははっああっはは、ひひっひひひっひ』

    そして、最後に、こんな声が・・・・・バーには、こだましていた。

    「本当、俺達が作ったモンなんて、ろくなもんじゃねーな、ひっひっひひ、ひゃっほーい」

    バーの扉から、水が押し寄せてくる。
    その水は、全て流し去るような、全てを包み込んでくれるような、
    限りなく透明に近い黒と白が混ざったグレーの色をしていた。

    そんなグレーの水に飲み込まれていく波瀬。

    その顔は、申し訳なさと、何処か幸せそうな顔が混ざっているように見えた。



    面白いモノなんか、楽しいモノなんか・・・・・
    本当は何処を探しても見つからないのかもしれないない。

    大切なコトは、自分が、どう思えるか?

    そんなもんなのかもしれない・・・・・・・・・。










    『波瀬ッチ・・・・』

    『波瀬ッチは最後の瞬間』

    『どんな世界を創造したんだい?』


    『エピソード/15』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 15☆』


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    さかさまの靴80s☆エピソード14/1☆

    2007/05/06 02:28
    〜ひっくり変える世界〜

    何も見えない、真っ暗な世界の中、波瀬は静かに目を開いた。

    そして、現実を受け入れて、呆然と立つ尽くしてしまった。

    波瀬は、何も考えられなくなり夢遊病患者のように暗闇の中を彷徨っていると、
    ポツンと、何かの光で反射している鏡が目に入った。

    波瀬は、無意識の内に、そこに近寄り、
    鏡に映っている自分の顔を覗き込むように眺めてみた。

    そこには、まるで死んでしまった魚のような瞳が、じっと自分を見つめているように見えた。
    そんな、自分の姿を見た波瀬は、静かに呟いた。

    「誰だ、こいつ?・・・なんて顔してんだよ、なんて目してんだよ・・・俺は・・・そんなに変わったかな?」

    すると、暗闇の奥から、10年前に出会った奴等の笑い声が頭の中に響き渡った。

    そんな声を聞いた波瀬は、暗闇の中、手当たり次第に暴れだした。
    そして、大きな声で叫んだ。

    「出てくんなよ、お前ら!!・・・なんで、なんも変わんねーんだよ、俺だけじゃねーかよ・・・なに、やってんだ、俺は・・・騙し取った金で・・・マスターなんかやってよ・・・何、やってたんだよ・・・なんもねーよ・・・くだらない・・・くだらねーよ」

    その姿は、波瀬が幼い頃、どうしようもない現実が降って来た時に起こした姿とダブって見えた。


    波瀬は、暗闇の中、椅子らしき物を掴むと、
    自分を映している鏡がうっとしく思えて殴りかかろうとした。

    が・・・・。

    どうしても、鏡を叩き割る事が出来なかった。
    そこには、『まるでピエロのような自分の姿』があったからだ・・・・。

    そんな姿を見た波瀬は・・・・・呆然と立ち尽くしてしまい、こう呟いた。

    「まるで・・・・・俺はピエロだな」

    そのまま、崩れ落ちるように、しゃがみこんでしまう波瀬。

    すると、この空間を覆っていた黒い霧が少しずつ晴れていくように、
    少しずつ、バーが姿を現していった。

    そして、いつも頭の中に聞こえていた、あの声が波瀬の後ろから聞こえてきた。

    「鏡なんて壊しても、なんも変わらんやろ?」

    波瀬は、背中越しから聞こえる声の方に静かに首を回した。
    すると、そこには、ハピがケラケラと笑いながらカウンターに座っていた。
    波瀬は何か言いたかったが、ただ、見つめる事しか出来なかった。

    そんな波瀬の姿を見たハピは、面白そうな顔をして話し続けた。

    「アレ、なんつーんやろうね・・・フラッシュなんとかバック・・・どげんやったね?おもろかった?
    最後の方は、俺も、ちょっと遊んじゃったンやけどね」

    波瀬には、ハピは言っている事が、なんとなく分かっていた。
    それは、自分が歩いて来た道だったから。
    少しぐらい、遊ばれても、結末が変わらないことぐらい・・・・。

    何も話そうとしない波瀬にハピは、こう尋ねた。

    「アンタは、本当に、こんな結末で良かったっちゃろうか?」

    波瀬の頭の中では、現実と虚構の世界が入り混じっていた。
    そして、ある程度の事は理解できるようになっていた。

    やはり、何も答えない波瀬にハピは、いつもより多く喋りかけた。

    「なんね・・・・やっぱ、後悔しとったんやね」
    「他人の事なんか、忘れちゃえばよかろうもん、忘れちゃえよ・・・
    金がなくても、後悔せんように、出来たら良かったのに、のーー!!」

    そして、大きな声でこう叫んだ。

    「もう一回、やり直すね?・・・でも、やらんやろうねー波瀬ッチは」

    自分の事を見透かしたかの様に喋りかけてくるハピに
    波瀬は、押さえていた感情が、少しずつ、あふれ出していった。

    そして、ハピに尋ねた。

    「本当は最初から、わかってたんだよ、こうなる事なんて・・・・俺は海の中にいる魚と一緒だから、
    だけど、何が悪いんだ?なにが悪いんだよ?・・・・流れに逆らう事がそんなに悪いのかよ?」

    ハピは少し難しそうな顔をして「んー」と考え込んだ。

    そんなハピに波瀬は、さらに続けた。

    「俺は・・・本気で、そう思ってたんだけどな・・・なのに、どうして駆け上がった場所も、息苦しかったんだろう?」

    ハピは、何か思いついたような顔をして、ニッコリしながら波瀬に聞いた。

    「這い上がりたかったんや?波瀬ッチは」

    すると、波瀬は、いつもより、少し大きな声で答えた。

    「そうじゃない、俺は、ただ、今度は、あの時みたいに後悔したくなかっただけだよ」

    その言葉を聞いたハピは、少しトーンを落として波瀬に言った。

    「あの時って、不器用すぎるやろ、波瀬ッチは・・・・・。
    そんなに臆病になってしまうんやったら、どうして途中で、止まれんかったんやろね、
    無理する理由が見つからんのに、どうして、途中で、やめれんかったんやろね?」

    波瀬は、その質問に、すぐに、こう答えた。

    「仕方ないだろう」

    すると、ハピは大きな声で笑いながら波瀬の顔を、じっと眺めて言った。

    「仕方ないか・・・っはっはは、本当にそうやかね?
    波瀬ッチは何回、そうやって言い続けてきたんやろ?
    こうするしかなかった、いや、こうせんといかんかった、
    いつも誰かに言い訳して、本当は違うと自分に言い訳して、
    やりたい事が見んくなって、アンタには何が残ったんよ?」

    波瀬は、まるで、自分に言い訳しているような気分になっていたが、
    溢れ出した感情はさらに言葉を続けさせた。

    「俺は、ただ、妹に合いたかっただけだよ」

    怒鳴るように自分の言葉を投げた波瀬に対してハピは、
    真顔になって答えた。

    「そやね、やけど、・・・波瀬ッチに妹なんておらんやろ」

    波瀬の目は大きく開き、動揺はした体は大きく震え始めていた。
    そして波瀬はハピに、すがる様に言葉を投げた。

    「・・・・ちょっと待てよ」

    すると、ハピは、今まで見たことのないような鬼のような形相で怒鳴るように言った。

    「波瀬ッチー・・・・俺には見栄、張んなよ」

    波瀬は、怒鳴られた事と、一番、触れられたくない真実が自分に襲い掛かってきた事で、
    まるで子供のような声でハピに言った。

    「・・・なんで俺には居場所がなかったんだろ?」

    子供がダダを捏ねているような姿の波瀬を見たハピは、いつか見せたダンスしながら歌いだした。

    「最初から自分にあった居場所なんか、ない、ない、ない〜、
    だから、みんな、必死になって自分の居場所を作るんやろ?」

    そのリズムに乗って波瀬は言葉を投げかけた。

    「分かったような事、言うなよ、居場所の作り方なんか誰も教えてくれねーじゃねーかよ!!」

    するとハピは。

    「そやね、それでも、きっと、きっと・・・作るしかないやいんやないかなー」

    といって歌うのをやめた。

    そして、波瀬とハピは、初めて会話らしい会話を始めた。

    波瀬 「俺が悪いのかよ?作れない奴だっているだろ」
    ハピ 「んー」
    波瀬 「最初から、恵まれた環境にいる奴等に、俺の気持ちなんか、わからねーよ」
    ハピ 「だってさー、波瀬ッチは他人に興味がないんやろ?」
    波瀬 「・・・」
    ハピ 「やったら、他人もあんたに興味なんて、あるわけなかろうもん」
    波瀬 「・・・あいつ等が最初に俺の事を見なくなったんだ」
    ハピ 「シャラップ、それ、言ったら、きりないやろ」
    波瀬 「・・・」
    ハピ 「みんな、我慢しとっとよ、自由に生きとる奴を探す方が難しかろうもん」
    波瀬 「・・・・・本当に、そうかな?」
    ハピ 「マジになんなや、あんたも、本当はわかっとっちゃろ」
    波瀬 「何をだよ」
    ハピ 「後悔なんて・・・ただのコトバに過ぎんって事ぐらい」
    波瀬 「・・・・・・」
    ハピ 「だけん、あんたは、マスターなんかやって、俗世間を見続けようと思ったんじゃないとね」
    波瀬 「違う」
    ハピ 「そうやって、俺と一緒に、抵抗ば、してみたんじゃないとね??」
    波瀬 「違うんだ」
    ハピ 「そげん言って、波瀬ッチは、忘れたフリしとるだけやろ、見えないフリしとるだけやろ?」
    波瀬 「違う、そうじゃない」
    ハピ 「やったら、あんたから見た俺は、どう見えるんよ?」

    すると・・・・。

    波瀬にはハピの顔が、ある男の顔に見えてきた。



    『エピソード/14/2』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 14/2☆』


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    さかさまの靴80s☆エピソード 13☆

    2007/05/05 08:29
    駅の近くにある、地下のバー。

    地下のバーの中には床に倒れて込んでいる波瀬の姿がある。

    そんな可笑しな光景を無視するかの様に中央に見えるテーブルでは、
    80年代生まれのような大人になりきれていない人々がテーブルを囲んで、くだらない話をしている。

    それは、今、まさに乾杯の終わったかのような、にぎやかな感じに見える。

    自分の意思とは関係なく体が起き上がっていく波瀬。
    それは、誰かに糸で操られているかのような感覚だった。

    よくよく、周りを見渡すと、その若者達の顔が見える。
    それは、昔、見た事のある面々だった。

    笹井によく似た顔の若者が波瀬を見ると、ケラケラと笑い出しながら波瀬に、こう尋ねた。

    「お前、後悔してるのかよ?」

    波瀬は、その空間に耐えられなくなり急いで外に出て行こうと思った。

    が・・・。

    どうしても体が動かない。

    波瀬は、身動きが取れない状態で大きく叫んだ。

    「お前・・・誰だよ?」

    すると、波瀬の視界は、まるで、海の底に落ちてしまったかの様な
    真っ暗な世界に変わっていった。


    『きっと僕達は後悔した回数だけ素晴しい事を想像できる』
    『そうじゃないと平等じゃないから・・・・・・・』
    『だから僕は最後に笑っていたんだと思うんだ』




    『エピソード/14/1』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 14/1☆』


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    さかさまの靴80s☆エピソード 12☆

    2007/05/04 08:25
    12月/下旬・・・山川村

    遠くに古い集会場のようなモノが見える。

    村の外には、風の音だけが響き渡り、虫達の鳴き声は、
    次の季節を待つかの様に静まり返っていた。

    そんな中。

    大きな銃声の音が響き渡った。

    その音は、まるで。

    誰かに、自分がココに確かにいた事を証明したいかのごとく
    大きく、そして、高々に空の中に消えていった。

    しばらくすると、古い集会場のような建物の中から、若い青年が
    大きなスコップを持ちながら
    一人の男を背負って何処かに歩いていった。

    その青年は、ケラケラと笑いながら『赤とんぼ』の唄を口ずさんでいた。

    そして、その光景を僕は・・・・・。

    波瀬洋平は静かに何もせずに・・・・。

    ただただ、眺めていたんだ。

    くだらない・・・・。
    何も変わらない・・・・。
    そんな僕の新しい年月が、もう少しで始まる時。

    誰かの時間はココで終わりを迎えた。



    君が想っていた世界はどんな景色だった?
    君が選んだ選択肢は、君に、どんな景色を見せてくれた?

    僕等が想像した世界は・・・・何処に行けば存在するのだろう?

    『エピソード/13』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 13☆』


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    さかさまの靴80s☆エピソード 11☆

    2007/05/03 10:17
    2時間前・・・地下のバー。

    目を開けている時に見る夢は、いつも儚いから
    まぶたの裏に描いた世界を、もう一度、見たいから
    僕は静かに瞳を閉じたんだ。


    マスターの前には、不気味な笑みを浮かべた警察官が立っている。

    しばらくすると、
    警察官はバーの中を見渡しながら、静かにマスターの元に歩いて来て

    「やっぱりマスター、一人だね」

    と言った。

    困惑しているマスターは波瀬がいるカウンターを眺めた。

    そこには確かに波瀬は座っていて、
    俯きながら、何か考え事をしているように見えた。

    そんなキョドッているマスターをあざ笑うかのように、
    警察官は若者達が飲んでいたグラスを手に取ると、
    一気に飲み干し、その後、不味そうな顔をした。

    そして、喋り始めた・・・。

    「マスターは、なんで、こんな所に残ってたの?ニュースちゃんと見ないから、こんな事になるんでしょ、仕込が大変なんのは分かるんやけど、こんな日ぐらいは休めばよかったのに・・・・・そしたら、閉じ込められんですんだのにね」

    少し体が震え始めているマスターは、
    変な事ばかり言う警察官に嫌悪感を覚えて質問をした。

    「・・・・さっきから、何、言ってるんですか?」

    警察官は、マスターを、一度、見ると
    何処となく残念そうな表情をした後に、バーの扉に向かって歩き始めた。

    そして、扉の前に着くと、振り返り、背伸びを一度すると、
    「気が付いたら、出れなくなったん?」と言葉を投げかけた。

    マスターは馬鹿にされているような気持ちになって、少し大きな声で答えた。

    「今から出ますよ!!」

    その言葉を聞いた警察官は、高々に笑い声をあげた。

    その笑い声は、バー全体に響き渡り、
    反響してまるで大勢の人々に笑われているような気分になる笑い声だった。

    そして、その笑い声は、マスターには聞き覚えのある声だった・・・・。

    しばらく笑い続ける警察官。

    笑いすぎたのか、少し咽てしまった警察官は、大きく深呼吸した後に

    「危ねー、危ねー・・・・・そろそろ、遊びは終わりやね」

    と、言った後に、静かに扉を開けて、バーから居なくなってしまった。


    ボー然と立ち尽くしているマスター。

    マスターは、大きく深呼吸をすると、カウンターに居る波瀬に言葉をかけた。

    「なんだ、あいつ、可笑しな事、言って・・・ねえ、波瀬ちゃん」

    波瀬の返事を待つマスターだったが、一向に返事は返ってこなかった。
    可笑しな空間に閉じ込められてしまったような感覚に陥ったマスターは
    急いで、波瀬の元に近寄り、肩を触った。

    すると・・・・。

    波瀬は操り人形の糸が切れてしまったかのように崩れ落ちてしまった。
    その、光景を見たマスターは、体の震えが止まらなくなり、
    バーの扉まで駆け寄った。

    扉のノブに手をかけたマスターは、一言

    「可笑しいな、コレは・・・・可笑しいな、こんなハズ無いんだ」

    と呟き、ノブを回した。

    が。。。。

    どれだけ、力を入れても、扉が開かない。

    可笑しいと思い、ドアの奥をガラス越しに見るマスター。
    そこには、大量の水が階段から押し寄せてきていた。

    パニック症候群のように取り乱していくマスター。

    ふと、カウンターに目をやると、
    そこには崩れ落ちたハズの波瀬が煙草を吸って座っていた。

    マスターの頭の中で、色々な出来事が思い出されていった。
    だが、マスターは、その真実を見えない事にするかのごとく、こう叫んだ。

    「お前、誰だよ」

    そして、静かに目を閉じた。


    『エピソード/12』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 12☆』
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    さかさまの靴80s☆エピソード 10/2☆

    2007/04/30 16:35
    黙っていても、なにも変わらない。
    壊れるほど叫んでみても、きっと、君には届く事はないのだろう。


    運動会のカケッコのスタートの時のような音が鳴り響いた古い集会場。
    そこには楽しさの欠片も見当たらなかった。

    そんな、乾ききった大きな音がした後に最初に口を開いたのは前川だった。

    前川が、自分の太ももの辺りを見ると、少し小さな穴が開いていた。
    静かに蕨から目を逸らし、須賀を見てみると、
    須賀の右手に握り締められているピストルから白い煙のようなモノが出ていた。

    その瞬間、前川に激痛が襲いかかり、地面に倒れこんだ。
    前川は、何故、自分が打たれたのかが理解できずに須賀に、
    すがる様に喋りかけた。

    「痛ー、痛ーよ、なに撃っちゃってんだよ、馬鹿じゃねーの」

    すると、須川は、少し残念そうな顔をして答えた。

    「すまんな」

    前川には何故?と言う疑問の感情と、
    須賀に対する怒りで我を忘れてしまっているように見えた。

    「なんでだよ、なんで、俺がこんな目に合わないといけねーんだよ、須賀!!」

    須賀は前川を見下ろした後、窓の方を眺めながら、答えた。

    「・・・・色々考えてたのに・・・・・全部パーだな」

    激痛が走っていた前川だったが、
    何故だか、痛みと言う感覚よりも、怒りと言う感情の方が大きかったのか、
    それとも、まともな精神状態ではなかったのか、
    大きな声で痛がり、叫ぶような事はなかった。

    その光景を、後ろに立っていた吉田がケラケラ笑いながら見ていた。
    その吉田に須賀が声をかけた。

    「吉田、病院、連れてってやれよ」

    吉田は、かったるそーに、答えた。

    「ああ、はい、でも、本当いいんすか?」

    須賀は、前川を見ると、少し寂しそうな目で

    「ちゃんと後片付けしないと・・・・だろ」

    と、言った。その、瞳は、もう前川に会う事はないだろというような眼差しでもあった。

    すると、吉田は、前川を見ると

    「ざまーねっすね、じゃあ、行きますか、前川さん」

    と言いながら、前川の肩を掴んだ・・・その瞬間。
    前川は、その手を振り払い、吉田に対して大きな声で叫んだ。

    「俺に触んじゃねーよ!!」

    吉田は、一度、後ろに下がると、近くにあった、木製の椅子を手に取り、
    思いっきり、前川の頭目掛けて振り下ろした。

    地面に崩れるように這い蹲る前川。

    そんな、姿を見て、少し面倒くさそうな顔をしながら、吉田は、

    「はー、マジ面倒くせー、はー、じゃあ、後はヨロシクお願しますね」

    と言いながら、前川を背負って集会場を後にした。

    集会場に残った蕨と須賀。

    須賀はピストルを目の前にしても堂々としている蕨に、
    少し疑問を持ったのか、質問をするかのように喋りかけた。

    「こう言うの、慣れてるの?」

    すると、蕨は「・・・別に」と答えた。

    須賀は、煙草を吸い始めると、

    「・・・しょうがねーな・・・あいつ、悪い奴じゃなかったんだけどな」

    と言った後に。

    「薄々は気づいてるんじゃないの?あんたも最後にはああなるよ」

    と、言った・・・・・・すると、蕨は、いたって冷静な顔をしながら答えた。

    「まあ・・・分かってるつもりですけどね」

    須賀は少し驚いたような顔をして、最後の質問をした。

    「そこまでして、守りたいもんかねー?」

    蕨は、須賀に対して初めてニッコリした笑顔になって答えた。

    「まあ・・・・・初めて出来たトモダチですから」


    『エピソード/11』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 11☆』


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    さかさまの靴80s☆エピソード 10/1☆

    2007/04/26 10:56
    10年前・・・12月。


    各々に渦巻いている真っ黒な気持ちとは裏腹に、
    季節の色は、真っ白になろうとしていた。

    窓から暖かな光が差し込んでいる中。
    古い集会上の中には、蕨と笹井の姿があった。
    蕨が、何か資料のようなものを渡すと笹井は、それをもって部屋を出て行った。

    微動だに動こうとしない蕨。
    風の音だけが集会場に鳴り響いている。

    窓から差し込む光が、少し赤に染まっていくのを眺めている蕨。
    何かに気づき煙草を吸い始めると、
    そこに須賀軍団が扉を開けて入ってきた。

    だが・・・・その中に波瀬の姿は見当たらなかった。

    フテブテシイ態度で「おはよう」と言った須賀に対して、
    蕨は「いい天気ですね」と答えた。

    すると須賀は、「あまり好きじゃねーけどな」と答えた。

    そんな須賀軍団を見た蕨は、前川の姿を見て、
    クスクスと笑いながら言った。

    「マイナスになるような人物は居ない方がいいと思いますよ」

    笑われている前川の額には、血管が浮き上がっていた。


    ここ一ヶ月、蕨と須賀は話し合いの場を何度も設けていた。
    だが、一向に話はまとまらず、時間だけが刻々と流れていった。

    そんな中、蕨は弁護士の波瀬の事を調べ上げていた。
    ・・・・そして、偽者だと言う事まで調べ上げた。

    そんな状況の中。
    蕨は、それをいい事に、とんでもない金額を須賀達に吹っかけていた。

    そして・・・・・それは、前川の仕事のミスでもあった。

    前川は主に情報操作に関わる仕事をしていた。
    そこで、少しの糸の縺れがあった。
    そこを蕨に突かれた。

    須賀は頭を悩ませたが、ダム建設の仕事は、やたら俗世間が動く。
    マスコミやらなんやら、だから、出来るだけ穏便に仕事は済ませたかった。

    そんな事を逆手に取った蕨の行動だった・・・・が。
    須賀は、思った以上に、須賀から歩み寄ろうとはしなかった。

    須賀は、待っていたのかも知れない、何かチャンスが訪れる事を。

    そんな、須賀の気持ちを知るよしもない前川は、
    自分の失敗を取り戻そうと、平常心をなくしているようにも見えた。

    そんな、互いの思惑が渦巻いている中・・・・・。

    吉田だけが、あっけらかん、とした顔でキュウリを食べていた。


    蕨は、須賀に笑いながら、こんな質問をした。

    「こないだ言った、俺らの提案は聞いて貰えそうですか?」

    すると、須賀は苦笑いをしながら答えた。

    「・・・・ちょっと、難しいかもな」

    すると、蕨は真顔になって言った。

    「そうですか、須賀さんも早く決めたいでしょ?そんなにグズグズしてたら、時間かかってしょうがないですよ」

    そんな舐めきった態度の蕨に、前川は、切れる気持ちを抑えながら、
    大きな声で怒鳴った。

    「お前な、あんま調子のってっと、ぶっ殺すぞ」

    その言葉を聞いた須賀は、前川の顔を凝視して、軽く首を振った。

    連携が旨く取れていない須賀軍団。
    そんな一同を眺めながら蕨は喋った。

    「脅迫ですか?そんな事しても、なんも変わらない」

    そして続けた。

    「返ってやりにくくなるだけですよ・・・・違いますか、須賀さん?」

    だが・・・・・。
    その言葉に反応したのは前川だった、そして言葉をさらに大きく発した。

    「お前、そんなに死にたいのかよ?」

    だが・・・・・。
    その言葉に反応したのは須賀だった。
    そして、前川の胸ぐらを掴むと

    「前川、お前、少し黙ってろ」

    と言った後、大きく肩を落として畳に座った。


    しばらく何もおこらない。
    しばらく・・・・・。
    しばらく・・・・・・・・・・・・。
    何もおこらなかった。

    そんな時間が、どの位、過ぎただろう。
    よくよく、見てみると前川の足踏みするスピードだけが速くなっていた。

    そんな中。

    前川の頭の中には聞こえる事のない虫の音が鳴り響いていた。
    寒い季節の中では聞こえる事のない鳴き声が。
    それは、前川が、この村に訪れた時から、ずっと鳴り響いていたのかもしれない。

    そして、その音は、前川の頭の中でドンドン大きくなっていき、
    今では、その音が街の雑踏のようにも聞こえるくらいの大きさで鳴り響いていた。

    風の通り過ぎる音だけが響き渡る集会場の中で、
    前川の頭の中は、『虫の音と言う名の雑音』で一杯になっていった。

    そんな状況に耐えられなくなった前川は叫んだ。

    「はー・・・あー・・・イライラするな、須賀!!」

    突然、叫んだ前川に対して、須賀は目を向けた。

    「意味あんのかよ?毎回、毎回、こんな事やって、時間の無駄だろ?」

    すると、須川はやけに冷静に言った。

    「お前、少し黙ってろ・・・・色々あんだよ」

    そんな、二人のやり取りを須賀よりも冷静に見ていた蕨は、
    追い討ちをかけるように前川に言った。

    「うるさいですよ、あんた」

    前川は、やり場のない怒りを何処にも吐き出すことが出来なかったのか、
    その怒りは少しずつ溢れ出してしまいようになっていた。
    そして・・・言い返した。

    「はあ?なんつった?お前、今、なんつった?」

    蕨は、大きく、ため息をすると、馬鹿にするように問いかけた。

    「うるさいって、言ったんですよ、耳、悪いんですか?それとも?頭が悪すぎて理解できませんか?」

    その言葉を聞いた前川は、体の揺れが止まった。
    そして、小さな声で呟いた。

    「・・・・・・なめんなよ」

    前川は、言葉を投げ終えると、静かにスーツの胸の内側にある、
    左の内ポケットに右手を入れた。

    しかし・・・・。

    前川の様子がおかしくなった事に気づいていた須賀が、
    前川が可笑しな行動に出る前に、一言、声をかけた。

    「やめとけ」

    すると、前川は内ポケットから手を出して、瞳孔が開いた瞳で須賀を見据えて答えた。

    「なに言ってんだ?俺らみたいなのが、舐められたら終わりだろーが」

    須川、何を言っても聞く耳を持てそうにない前川から目を逸らし、
    左手で頭の後ろを掻いた後に、ボソッと呟いた。

    「お前、少し外で頭、冷やしてこいよ」

    前川は、一度、大きく息を吸い込むと、2人を見ながら言った。

    「ふざけんなよ、お前も須賀も、俺の事、舐めてんじゃねーよ、
    チッとばかり出来るからって調子乗ってんじゃねーよ、アホが」

    前川は、2人に、自分だけが相手にされていない事が歯痒かった。
    置いてきぼりを食らった少年のような感覚。
    自分には力がなく、どうする事も出来ないような。

    そこには仲間のハズの須賀が居て。
    どして、自分は、そこにすらいれないのか?

    だから、前川は自分の存在を認めて欲しかったのかもしれない。

    そんな前川に蕨は、深いため息をした後に、又、言葉を投げかけた。

    「ハイハイ・・・・内輪もめなら、外でやってこいよ」

    その言葉を聞いた後から。
    前川の視線の中から蕨以外モノは全て消えていた。
    そして、凄く冷静に言った。

    「お前の、その喋り方が一番ムカつくんだよ」

    そして、静かに、内ポケットに手を入れた後に、
    中に入れておいたピストルを握り締めた。
    前川が「舐めた口きいてんじゃねーよ」と言った後に・・・。

    古い集会場の中では、乾いた銃声の音が響き渡った。



    『エピソード10/2』に続く。
  • 『さかさまの靴80s/☆エピソード 10/2☆』
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    タイトル 日 時
    さかさまの靴80s☆エピソード 9☆
    3時間前・・・地下のバー。 ...続きを見る

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    2007/04/25 09:00
    さかさまの靴80s☆エピソード 8☆
    10年前・・・11月。 ...続きを見る

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    2007/04/23 12:18
    さかさまの靴80s☆エピソード 7☆
    4時間前・・・地下のバー。 ...続きを見る

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    2007/04/22 12:59
    さかさまの靴80s☆エピソード 6/3☆
    古い集会場に窓から赤い光が差し込んでいる。 夕日が、波瀬の大きな影を作っていた。 その影は、まだ蹲ったままだった。 ...続きを見る

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    2007/04/20 09:41
    さかさまの靴80s☆エピソード 6/2☆
    古い集会場に残っている2人。 ...続きを見る

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    2007/04/19 10:31
    さかさまの靴80s☆エピソード 6/1☆
    10年前・・・・山川村/10月。 ...続きを見る

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    2007/04/17 10:58
    さかさまの靴80s☆エピソード 5/3☆
    いつからだろう? ハグルマが噛み合わなくなったのは? ...続きを見る

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    2007/04/16 02:08
    さかさまの靴80s☆エピソード 5/2☆
    蕨と笹井・・・。 ...続きを見る

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    2007/04/15 01:58
    さかさまの靴80s/☆エピソード 5/1☆
    10年前・・・・山川村/9月。 ...続きを見る

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    2007/04/14 10:47
    さかさまの靴80s/☆エピソード 4☆
    7時間前・・・。地下のバー。 ...続きを見る

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    2007/04/13 09:04
    さかさまの靴80s/☆エピソード 3☆
    10年前・・・・・山川村/8月。 ...続きを見る

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    2007/04/12 09:52
    さかさまの靴80s/☆エピソード 2☆
    8時間前・・・・・。地下のバー。 ...続きを見る

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    2007/04/11 08:45
    さかさまの靴80s/☆エピソード 1☆
    明日は必ずやってくる。 ...続きを見る

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    2007/04/10 08:57
    さかさまの靴80s/☆エピソード 0☆
    『僕は誰よりも君の事を知っている』 『だけど・・・・』 『君は僕の事なんて覚えていないだろう』 ...続きを見る

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    2007/04/09 02:25
    さかさまの靴80s/☆モノローグ☆
    さかさまの靴80s/☆モノローグ☆ ミカタを変えたら、世界はひっくり返る ...続きを見る

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    2007/04/08 04:40

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